医事関係訴訟(医療裁判)原告協力医のブログ

協力医としての思いなどを,時々発信していました. 最近では,自分のブログで協力医としての思いを発信しています. このため,このページは更新いたしておりません. 協力医としてのご依頼は,こちらまでおねがいいたします. http://www.minerva-clinic.jp/contact/index.html

2014年06月

弁護士さんから依頼されて
医療記録を分析すると

それまでに弁護士から聞いていた話と
まったく違う景色が見えるものです....

「難癖でしょ?こんなのやりたくないです.」

と,わたしがはっきりと表明していたような案件でも
医療記録をきちんと見ると,目がテンになるような内容があったりします...

なぜこのようなことが起こるのでしょうか?

医療機関側が,明白な医療過誤を認めている場合であっても
起こったことを全て説明しているとは限りません.

自分たちが言い逃れられないところは認めて,其の他のところは説明していなかったりします.

そうなると,受療者側は,納得できないので弁護士のところに行く,という構図なのでしょうね.

過誤を認めるのであれば,せめて,おこったことについては
包み隠さず説明して,信頼してもらえるようにしないと,と思います.






 

精神科は,医師配置基準が一般病床の三分の一となっています.
本年の診療報酬改訂で,抗精神病薬と睡眠薬・抗不安薬・抗うつ薬の多剤併用療法が規制されました.

弁護士の皆さんは,こうしたことをきちんと知ってから,訴訟に臨まなければなりません.
国が原則禁止していることを行って訴訟に至った場合,当該治療の必要性・妥当性を
立証する責任は,被告医療機関側にあることになるからです.

医療には,関係法規がたくさんあります.
法律の専門家といっても,弁護士が医業にかかる関係法規のすべてを網羅することは
不可能でしょう.

しかし,これを知っているかどうかで,裁判で主張する内容が変わるのも
お分かりと思います.



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「薬漬け」の悪循環 背景に少ない医師数基準 「検証・精神医療」多剤大量処方


共同通信社  2014年6月20日(金) 配信


 幻聴や妄想を抑える抗精神病薬が5種類、睡眠薬は3種類、それらの副作用を止める薬2種類。

 「入院するたびに薬が増え、興奮状態になったり口が渇いたり。それを抑えるためにまた薬、という悪循環だった」

 かつて飲んでいた計10種類の大量の薬を前に、山梨県内に住む木村照代(きむら・てるよ)さん(43)=仮名=は当時を「薬漬けの状態だった」と振り返る。

 中学生の時に統合失調症を発症。入退院を繰り返し、退院中も両親の暮らす家で引きこもり状態になった。「薬の影響で頭はボーッとして手足が震える。困っていたが、医師から『苦しくても飲むように』と言われた」

 転機は4年前に通い始めたデイケアだった。散歩や料理などの活動に加わったことで体調が良くなり、担当医の交代もあって徐々に薬を減らした。現在は少量の抗精神病薬1種類を1日1回飲むだけになった。

 「薬を減らしても症状は悪くならなかった。副作用がなくなり、体調もいい」と木村さん。現在は通院先の病院で看護補助のパートとして働く。

 日本の精神医療で長期入院と並ぶもう一つの特徴が、薬の「多剤大量処方」だ。東邦大薬学部の吉尾隆(よしお・たかし)教授によると、日本は精神疾患の患者に処方する薬の種類、量とも国際比較で群を抜いて多い。国立精神・神経医療研究センターの調査では、2011年時点で精神科の入院患者の42%が抗精神病薬を3種類以上処方されていた。

 背景にあるのが、国が定めた人員配置基準の「精神科特例」。精神科病院の医師数は一般病院の3分の1でよいとしている。ある院長は「医師の数が少ないから、どうしても薬で症状を抑えようとする。過剰な鎮静を『症状が改善』とみなし、どの薬が効いているのか分からないので、薬を減らしたがらない」と構造的な問題だと指摘する。

 多剤大量処方は心疾患や肺炎などさまざまな合併症を招き、突然死の恐れが高まるとの研究結果もある。だが、副作用を調べる血液検査を入院患者にしない病院も多い。吉尾教授は「体の状態を定期的にチェックすることが大切。患者は副作用を含めて薬のことを理解し、医師とよく相談しながら使ってほしい」と話す。

 ※多剤大量処方の見直し

 厚生労働省は精神障害の薬の使用を適正化する必要があるとして、2014年度の診療報酬改定で一定数以上の種類の抗精神病薬や睡眠薬などを処方した場合、医療機関への報酬を減額。一方、急に投薬量を減らすと症状悪化を招く恐れもあることから、国立精神・神経医療研究センターは昨年10月、適切な減量法ガイドラインを発表した。 

昨今,東京女子医大の小児に対するプロポフォール使用(小児への投与は添付文書上は禁忌)で
死亡事故が起こったことから,禁忌投与について考えてみたいと思います.

この判決を,トンデモ判決だと医療系雑誌に掲載されたようです.

https://twitter.com/afcp_01/status/264367337845686273



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高松高判平成17年5月17日 
 A(70歳女性)は,平成10年11月,原付で走行中,Y1の運転する自動車と衝突し、転倒して頭部等を打撲した。事故現場近くの病院で診察を受けたのち,Y2の経営する病院でB医師の診察を受け入院した。入院4時間半後,Aは昏睡状態に陥り,Bらによる血腫摘出手術を受けたが,事故後23日目に死亡した。遺族であるXらが,損害賠償を求めて,Y1,Y2を訴えた。 
 第一審では,Y1に対する請求は認容されたが,Y2に対する請求は棄却された。控訴を受けた高松高裁は,Y2の医師らには、経過観察義務及びCT検査義務を怠った過失並びに利尿剤マンニトール投与が遅れた過失があり、その過失とAの死亡との間には相当因果関係があるとして、請求を認容した。 
 高松高裁は,経過観察義務については,下記のように,「日本神経外傷学会のガイドライン」も引用して,被告病院の過失を認定した。  
「一般に頭部に強い衝撃を受けると頭部外傷が発生するが,その場合,脳には,打撲した部位の直下だけでなく,より高い割合でその反対側にも損傷ができるほか,出血が遅れて生じ,外傷性脳内血腫や脳浮腫が起こるなど病態が変化することがあり,特に,血腫が発生する場合の約50%が6時間内に,約80%が12時間内に
形成されること,通常の遅発性脳内血腫例の場合,少しずつ意識レベルが低下し,脳内血腫が一定の大きさに達したと同時期に急激に意識レベルが低下して,昏酔状態に陥ること,日本神経外傷学会の重症頭部外傷治療・管理のガイドライン作成委員会の報告(以下,「日本神経外傷学会のガイドライン」という。)によれば,『高齢
者は,talk and deteriorate(die)をきたすことが多く,挫傷性浮腫,脳内出血などによる厳重な観察が必要である。症状の悪化をみたら早期に手術(血腫除去術など)を行うことが望ましい。』とされていること,……[など]に照らせば,B医師には,外傷性脳内血腫を念頭においた臨床症状のより注意深い経過観察が必要であり 
特に意識レベルの推移,運動麻痺の出現の有無,患者の訴え(頭痛・嘔吐・嘔気など)の推移,クッシング反応の3主徴としての認識のもとでの血圧・脈拍数・呼吸状態の変動……をより注意深く経過観察する義務があるというべきである。」  
「そして,病状に全く変化がない場合や少しずつ改善傾向にあればCT検査は必須とはいえないが,病状に改善がなく少しでも悪化の兆候があれば,その後の治療や管理の参考とするためCT検査をする義務があるというべ
きである(乙ロ29)」 
 Aの治療に当たったB医師は,Aは,意識がやや清明な時期に(talk)被控訴人病院で受診したが,入院前後から嘔吐を繰り返したり嘔気を催したりし,また,頭痛を訴えるようになったにも関わらず,Aの頭痛及び嘔吐の
症状を外傷性クモ膜下出血による髄膜刺激症状であると診断し,[自院で の]CT検査に及ばないと考え,(自ら経過観察をしないのであれば)看護師に対し頭蓋内圧亢進症状につきより注意深い経過観察を指示すべきで
あったが,それを怠った過失があった,と判示した。  

マンニトール投与が遅れた過失について 
 「CT検査により外傷性脳内血腫の出現が認められる場合,頭蓋内圧亢進の進行を回避する方法としては,……マンニトール等の高張利尿剤の投与とともに,それに続く血腫除去手術以外に方法はない。……マンニトール等の利尿剤は,昏酔に陥った患者を救うためには一刻を争うものである……。 
 Y2は,グリセオール,マンニトール等の脳圧降下のための利尿剤は,急性頭蓋内血腫が疑われる患者には,出血源を処理し,再出血のおそれがないことを確認されるまではその使用が禁忌であり,能書にもそのことが明記されている旨主張[している]。しかし,能書は製薬会社の製造物責任を果たすための注意書きであって,
薬剤の作用機序やその使用によってもたらされ得る危険性を了解した上で,これに 従うか否かは医師の裁量権の範囲内である(つまり,利尿剤による出血の危険より血腫や浮腫の悪化のほうが生命へのリスクが大きいと判断した場合はその使用が許容される。)
能書と異なる使用をすることは,日本神経外傷学会のガイドライン
にも採用されているところでもある。Y2の上記主張は採用できない。」 
(引用元:http://www2.kobe-u.ac.jp/~emaruyam/medical/Lecture/slides/140222jikofunso.pdf)


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これのどこが,「トンデモ」判決なのでしょうか?

http://www.info.pmda.go.jp/psearch/html/menu_tenpu_kinki.html
【禁忌(きんき)】とは
  当該医薬品を使用してはいけない患者を記載しています。

   以下のような点から考えて、ある医薬品を使用することにより、病状が悪化したり、 副作用が起こりやすくなったり、薬の効果が弱まるなどの可能性が高いため、使用しないこととされています。

   
  • 現在の病気(原疾患)
  • ある病気が原因となって起こる別の病気(合併症)
  • これまでにかかった病気(既往歴)
  • ご家族の方の病気(家族歴)
  • 現在使われている他のお薬(併用薬剤)
  • 医薬品を使用する方の体質            など

  • 【原則禁忌(げんそくきんき)】とは
      当該医薬品を使用しないことを原則としますが、特別に必要とする場合には慎重な使い方を するべき患者を記載しています。

       本来は当該医薬品の使用を禁忌とするような場合であっても、 他に治療法が無いなどの理由から、特別に使用するときがあります。 その際は身体の様子を見ながら慎重な使い方をすることが必要とされています。

    臨床上,投与することの利益と不利益を比較して,説明して投与することは,医師の裁量権の範疇である,ということです.

    例えば,妊娠中に乳癌になった患者に,十分に説明したうえで抗がん剤を投与することもあるわけです.

    ですので,わたしはこれを,とんでもない判決とは思いません.

     

    昨今,医療業界では,医療事故を公表しているところもありますが.
    実際のところ,報告義務は,法的には特定機能病院に科されるのみ.

    公的性格の強いはずの病院でも,隠蔽することが散見されます.

    こうした場合,医療記録を見ても,なかなか真実にたどり着けない.

    すごい隠蔽例をご紹介します.

    ある日,突然,【スーツ姿の集団】が闊歩してやってきました.
    証拠保全でした.
     
    ある透析患者が,介護保険のショートステイに相当するサービスを病院で受けていました.
    (ということは,入院するような状況ではなかったということです.)
    ところが,この患者は,一人で違う階の浴室に入浴しにいったそうです.
    浴室が院内にその階にしかなかったからです.
    誰も付き添いませんでした.
    そして,浴槽に浮かんでいるのが発見されたが,入院しているフロアではないところで
    その階の看護助手に発見されたので,「関係ない」と放置されてしまった.
    数分後,看護師が発見し,医師を呼び,救命措置をとるも死亡.

    カルテにはこのようなことは書かれていませんし,緘口令が敷かれました.

    れっきとした社会医療法人の病院です.
    しかも,週間ダイヤモンドに上位でランキングされていたりするんですよね.


    こうした医療機関と戦うのですから
    弁護士の皆様も,きちんと備えてから戦ってください.

    戦うことに意義があるのではありません.
    勝たなければ意味がない.



     



    1999年、アメリカIOMの調査で、アメリカで年間44,000-98,000 人が医療過誤により死亡していると報告されました。
    しかし、2013年、実際はその4.5倍の死亡数となるのではないかと報告されました。

    http://www.beckershospitalreview.com/quality/study-medical-error-deaths-4-5-times-more-likely-than-iom-estimate.html
     
    いずれにせよ、大変多いですね。


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